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ヘンリー・ジェイムズ短編集 ─「ねじの回転」以前─

著:ヘンリー・ジェイムズ/訳:李春喜(へんりーじぇいむず/りはるき)

評価した人の総数:3人 オススメ総数:(13コ)★★★
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作品紹介

「ねじの回転」で広く知られるヘンリー・ジェイムズ。その心理主義の手法が花開く以前、20代から30代にかけて書かれた短編小説の数々には、ジェイムズの「もう一つの顔」とも言うべき特徴と、世にも早熟な華麗なる「知」の萌芽が認められる。関西大学で教鞭をとりながら、そのようなジェイムズの初期作品の魅力に取りつかれ研究を続ける訳者による、本邦初翻訳の小説集。
  • ファイルサイズ:2.1 MB
  • ファイル形式:pdf
ジャンル:
小説・エッセイ > 小説 > 翻訳
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著者プロフィール

●著/ヘンリー・ジェイムズ
1843年アメリカに生まれ、アメリカとイギリスの両国で活躍。
19世紀から20世紀の英米文学を代表する作家。
心理主義小説の先駆者として知られる。
兄は哲学者のウィリアム・ジェイムズ。

●訳/李春喜
1963年生まれ、大阪府出身。
1991年、関西大学文学部卒業。
2010年現在、関西大学外国語学部教授。

※この情報は、初版刊行時のものです。

この作品に対する評価

評価した人の総数:3人 オススメ総数:13

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  • GHOST IN THE MACHINE ~内なるアメリカの眼差し

    2014/08/11 投稿者:JapooJr オススメレベル:★★★★

    アメリカ南北戦争が終結する前年に書かれた「過ちの悲劇」はじめ、全6編の短編集。これらは、ヘンリー・ジェイムズ21~31歳の作品で、いわば習作期間。この後1876年にロンドンに移住し、イギリスを中心にヨーロッパを拠点とすることになるので、渡英前の米国在住時の産物である。「訳者あとがき」に記されているが、本邦初訳とのこと。いずれも、後期作品群にはみられない、話の筋(プロット)が縦横に張り巡らされている。とはいえ、晦渋な表現は微塵もないので、スラスラと読み進めることができるだろう。

    英米では著名な作家・小説家でありながら、我が国ではヘンリー・ジェイムズというと、ウィリアム・ジェイムズの弟として知られるか、代表作「ねじの回転」をはじめとする<心理主義小説>の先駆者として文芸愛好家に親しまれるか、であった。しかし今回訳出された若かりし頃の初期作品によって、技巧面だけでなく、これまで着目されにくかった世紀末米国人の《物語作家としての一面》がクローズアップされるかもしれない。我々読者も、あらためて古き良きアメリカ小説の醍醐味を堪能してみたいものである。

    ジェイムズは、『ハックルベリー・フィンの冒険』ほかで有名なマーク・トウェイン、『悪魔の辞典』で知られるアンブローズ・ビアスとほぼ同世代で、後にイギリスへと渡るT・S・エリオットやエズラ・パウンドらよりも早く新大陸を離れた文学者でもある。旧世界(ヨーロッパ)と新世界(アメリカ)の間で揺らぐ自我を礎としながら、さらに前近代と近代、あの世とこの世、といった相対立するもの双方を往還するかのような彼独自の謎めいた作風はやはり「アメリカからの距離感」が生み出したものなのだろうか。

    南北戦争後に文明化を推し進め、急速に近代国家へと変貌していく母国アメリカと、それと併行して出現する故郷喪失者たち(ジェイムズ自身もコスモポリタンとして、そこに含まれるであろうか)の浮遊する姿を両眼で見つめ続けた結果、人間意識の内奥の世界(=「内面」)を探求する「西欧近代小説」の嚆矢ともいわれる作品を量産することとなった。その後、時を経ずにいわゆる大衆社会が台頭してくるが、そうした<生>の危機が迫る状況と呼応するように精緻な心理描写と鮮やかなレトリック(修辞)により紛れもなく孤高の文学を構想した。

    後に通例「意識の流れ」と呼ばれる手法を駆使して長編小説を著わすことになる何人かの大作家(マルセル・プルースト、ジェイムズ・ジョイス、ヴァージニア・ウルフ等)の先鞭をつけた存在といっても過言でなく、同質の原型のようなものがジェイムズ作品の中にみられるかもしれない。それはさておくとしても、近代文学の豊饒さを実らせる種子のひとつとなったであろうことは疑いない。また、現代に生きる我々が織り成す綾、即ち「自我のゆくえ」とも一脈相通ずるものがあるのではないか。いかがわしい所以だ。

    さて、6編の寸評を記す。「過ちの悲劇」…高貴な女による殺人というMistake。「友人ビンアム」…Alone~純粋な一つの散文。「ある肖像画の物語」…微笑はShadowの中に。「ある問題」…男と女のお話and then。「ユースタス様」…Time~失われた時を求めて。「アディナ」…回想は夕べの雲のようにのべつまくなしOasisを探す。どの作品も現代小説に引けを取らない、虚実交えたアイロニカルな妙味が備わっているが、他者を顧慮せずに茫洋とした消費社会の虚飾に依存する我々の偏狭さがより判然として恐ろしい。

    それにしても人生における邂逅は、栄光の反語の如く、無慈悲なほど堅固な代償を払うものなのか。

    個人的には、久しぶりに痛烈な打撃を受けた短編小説であった。翻訳も非常にこなれていて、古臭さを感じさせない読後感を与えてくれる。これからは、「ねじの回転」のみ話題とされる英米文学の大家から短編小説の名手へ――ジェイムズ再評価も近いようだ。参考までに書くと、訳者の関西大学外国語学部教授・李春喜氏は、同大学出版部 より共訳者として『ヘンリー・ジェイムズ短編選集―「オズボーンの復讐」他四編』(2012年10月刊)を上梓されている。興味ある方は、こちらもぜひ読まれるとよいだろう。

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  • 読み応えありました。

    2014/06/26 投稿者:shirokuro オススメレベル:★★★★★

    物語の面白さ+訳文の滑らかさで、一気に引き込まれました。

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  • 19世紀アメリカ

    2014/06/05 投稿者:ラオス オススメレベル:★★★★

    19世紀アメリカの雰囲気が上手く表現されている。また、ストーリーの完成度が高い為、非常に面白い。英語が堪能になったら原文のままで読んでみたいと思った。

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