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『日本って、大変!? 「国際」的な高校の青春事件簿』公式レビュー / 第23回

2015/10/13(火)

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 インターネットやインフラの発達で他国の人々との距離が随分縮んだ昨今だが、シャイで英語下手とも言われる大多数の日本人にとって、未だ国際交流は敷居が高いというのが実情ではないだろうか。今回紹介する『日本って、大変!?「国際」的な高校の青春事件簿』は、生徒数の三分の一が外国人、もしくは帰国生徒という学校に赴任することとなった著者が、日本語や日本文化に不慣れな生徒たちと向き合っていく中で、彼らとの考え方のズレに驚かされる様子を綴った作品だ。突拍子もない言動に振り回される著者たち教師の戸惑いは、笑いとともに強い共感を誘う。一方で、本作の主役である生徒たちが、異国の地で必死に日本語を学び、戸惑いながらも日本文化と真摯に向き合おうと努力する姿を通して、異文化を学び受け入れるとはどのようなことかを知ることができるだろう。

 異なる言語、異なる文化、そして異なる価値観の中で生きてきた生徒たちが集う学び舎なのだから、予想もできないようなハプニングが起こるのは必然だといえる。例えば、日本語への誤解から突拍子もない行動をとってしまう生徒たちの様子は、当人たちが至って真面目なだけに、申し訳ないと思いつつも、笑ってしまう。なかなか開かない踏切を迂回させるため「公園をまわって来なさい」と指示したところ、公園の中を走って回ってから登校してきた中国人とイギリス人の男子生徒たち、職員室前に「会議中につき、関係者以外立ち入り禁止」という札を立てておいたのに、自分が学校「関係者」だから問題ないと誤解して入室してしまった帰国生徒、教師に対して日本語で「You」と言う際、「あなた」「君」「あなた様」とたて続けに言葉の選択を誤ってしまったアメリカ人と台湾人のハーフの生徒など、笑いながらも、日本人にとっては当たり前の言い回しが、慣れない者にはこれほど紛らわしいのかと気付かされる。そして、そんな難解な言語を習得するため、失敗を繰り返しながらも成長していく生徒たちの勇気は、読み手にも希望を与えてくれるだろう。

 ただし、作中に描かれるのは笑い話で済まされるような出来事ばかりではない。国や文化、或いは両親など周囲の人々の都合に翻弄される若者たちの苦悩にも触れられている。例えば、『羅生門』の読書感想文を書かせる件では、飢えが人をどのように変えてしまうのかを知るアフリカはシエラレオネ出身の生徒や、共産党による支配を経験している中国人生徒の感想文に、それぞれの国の抱える深刻な問題が顕れている。或いは、日本で成績を落とし「prideなくなっちゃった」と嘆く女生徒、内戦状態の故国で同じ部族の女性と結婚するよう母親に強要される男子生徒など、それぞれの生徒がそれぞれの悩みを抱えながら異国の地で勉学に励む様子が胸を突く。『日葡辞書』の編纂者の苦労を想って涙ぐむ生徒がいたという件も、彼らが重ねてきた苦労の重さを強く感じさせる。このように、笑いあり涙ありのリアルな青春模様を読めば、国籍や言語に隔てられた彼らにも、強い親近感を抱くことができるはずだ。外国人と関わる機会が珍しくない昨今だからこそ、彼らに壁を感じている人は、まず本作を読み、異国で生きる若者たちの気持ちを感じ取ることから始めてみてほしい。

(written by 持田)


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