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『あっ、そうかそうなんだ 役に立つ常識』公式レビュー / 第27回

2015/12/25(金)

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 最近、巷では「コミュ力」というスキルが社会において、ひいては生きるために必須なものとして持て囃されている。たしかに、いわゆる「コミュ力高め」な人間を観察してみると、適切なアイスブレイク、機知に富んだ会話、気持ちのいい所作などを、さらりとやってのけている。本書の著者も、まさにそうした人物なのだろう。長年のサラリーマンとしての経験から得た「役に立つ常識」が、幅広く収録されているのが本書の特徴だ。著者がこれまで耳にしたスピーチや挨拶、メディアで取り上げられていた「使えそう」な用語・知識は、言葉の語源や文化・習慣、ビジネスといったものから、格言にスポーツ、食、地理に至るまで、実に多様なトピックが展開されている。

 ここまで網羅された内容だが、ほどよい軽さがあるのもいい。日常会話で使える範囲の情報量など限られている。深い含蓄を披瀝するスタイルではなく、ちょっとした話から「あっ、そうかそうなんだ」と興味を引いてもらえれば、あるいは他人の会話に対して自身が興味を持ったならば、コミュニケーションにおけるハードルはずいぶん下がることだろう。「日本三景はどこ」なのか答えられ、「五常の徳」を解し、「有名古典の簡単な説明、冒頭の一節」も覚えている、インターネットにも弱くはない。何も奇抜で誰も知らないようなムダ知識を詰め込まずとも、自然に会話を楽しめる余裕も持てる。大仰な肩書が有ろうとなかろうと、会話の中心に立つことだって可能なのだ。こうしたコンセプトのもと、本書は成立している。

 例えば、「スポーツ」の項には、日本のプロ野球・アメリカのメジャーにおけるリーグはそれぞれ2つあること、サッカーの欧州リーグの有名どころ、ゴルフの四大大会について述べられている。これだけでも、さしあたり会話の糸口として十分だろう。人気選手や試合の状況といったフレッシュな情報は、会話の中から学んでいけばよいのだから。他にも「各種会合での司会・挨拶」といった行事モノも押さえてある。知っているようで知らないような、特段教わった記憶もないが、なんとなく知っている。そうした「常識」がまんべんなく並んでいるので、さまざまなシチュエーションの中で反映できるものが、読者それぞれに見つけられるのではないだろうか。

 著者は「話題豊富な人間であると同時に、いろいろな面でセンスのある人間であって欲しい」という。なるほど、本書にはそのエッセンスが随所にきらめいている。本書を読み、お堅い知識から眉唾モノのネタまで自分のものにしてしまえば、だいたいの局面には対応できそうだ。つまらぬ質問で話の腰を折ったり、自分の都合で独擅場にしないと気が済まない振る舞いは、常識的なビジネスパーソンに似つかわしいとは言い難い。「社会に出て笑われないようにしなさい」(日本の文化は「恥の文化」)という著者の言葉は、深い親心のように、沁みてくる。「知らない」ことが悪とは言わないが、とかくこの世の中は世知辛い――。人生の先輩として、著者が最も伝えたい「常識」は、このメッセージにあるのかもしれない。

 ちなみに全くのムダ知識だが、「常識」という言葉は、「Common Sense」の翻訳語らしい。直訳すれば、共通した感覚、といったところだろうか。様式化されたマナーよりも手前の、判断基準やモラルを指す言葉と言い換えてもいいだろう。絶対的に定められたものではないが、これが欠けたら致命的かも、といった感覚的なもの。時代や場面によっては合わないこともあるかもしれない。だからこそ、「常識」のセンスを磨くつもりで、気軽に本書を読んでいただきたい。

(written by 陸冬)


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