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『私にも登れました ─登山未経験主婦、六十歳からの百名山─』公式レビュー / 第42回

2017/01/18(水)

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 「登山」といえば、一昔前はただただきついイメージだけだった気がするのだが、ここ数年は「山ガール」という流行語もうまれたほど、多くの人から注目を集めている。また、日本最高峰である富士山が、2013年に世界遺産に登録されたことによる影響も大きいかもしれない。

 本書の著者は、ご主人の定年と自身の健康のため、六十歳を機に登山を始めている。ここに出てくる「百名山」とは文筆家で登山家でもあった深田久弥氏の著書「日本百名山」で選定されている山のことである。著者は、その百の山を六十歳から7年かけて制覇したとある。登山未経験の私にとってそれがどの程度のものなのか、正直なところあまりピンとこない。ただ、「百の山」と聞くとインパクトはあるし、年々運動量が減ってきている私にとっては真似できないことである。

 登山といえば、やはり夏がベストシーズンであるようで本著者も「夏山だけしか登らない」としている。なので、1年間でも限られた時期となり、実質は7年とはならないのかもしれない。「1シーズンに二十三座も登れた年があります」(座とは山の数え方の一例。主に高い山を数える場合に使われる)とあり、その日程をみてみると5月から10月にかけてほぼ毎週1つの山を登っていたことになる。そして、「1週間に1座平均で登りますと、すごく忙しいことになります。登山から帰ると洗たくをして、登山用品の始末をして、それから次の登山の準備をします。」とあるように、山に登っていない間もほぼほぼ登山のことに追われているのである。それでも「どんなに忙しくても山を下りる時には、主人と次の山の相談をしていました」とその魅力について語っている。そこでしか出会えない自然の光景、著者は特に花々に惹きつけられ、それまでの苦労も疲れも忘れられるのである。その光景を目にしながらのコーヒータイムは格別なものにちがいない。

 一つ一つの登山の記録を追っていくと、1日でおわるものもあれば、2~5日間かけて登るものもあり、その標高や条件によって変わってくる。著者が百名山を制覇できた理由の一つには、無理をしないということがあるようだ。一般的な目安よりも時間をかけ、人に道を譲りながら一歩一歩確実に登っていく。好きだと思えることだからこそ、心にゆとりをもつことが大事だし、長続きする秘訣なのであろう。とはいえ、日々のトレーニングも欠かさず続けているという。無理はしないけれども、努力はおしまない。六十という年齢を考えると「老い」という言葉と結びつけてしまうが、今時の六十は元気で活動的な人が多いのかもしれない。

 時折耳にする遭難事故等からもわかるように、登山は危険がともなうものである。著者も「あとがき」で「安易に山に入らす、くれぐれも慎重に登っていただきたい」と述べている。流行りものだからと安直に手を出してよいものではないことを忘れてはいけないのである。

 著者は、百名山を達成後、二百名山に挑戦中と記されていた。そもそも日本に山がどのくらいあるのかと思い、インターネットで検索してみると、その定義にもよるらしいが、正確な数は不明でとにかくたくさんあるらしい。ふと、「そこに山があるから」という名言が思い浮かぶ(登山家 ジョージ・マロリーの言葉)。日本にそれだけ山があるのだから、著者のように百山を目指すとはおいそれと言えないが、一度も登らないのはもったいないのかもしれない。

(written by 倉科)


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