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『マイ・マム・シングズ 母子二人のアメリカ留学記』公式レビュー / 第43回

2017/02/10(金)

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「夢」や「やりたいこと」というのは、幾つになっても、無限であるかのように湧いてくるものだ。しかし当然、思うのは簡単でも実現するのは、なかなか難しい。それらが自身にとってハードルの高いものだと、取り組む前からできない理由や失敗する未来を頭の中に思い描いてしまい、諦めてしまうということもその理由だろう。かくいう私も行動する前からあれこれと考えてしまう性質であるため、そういう経験は少なくはない。そんな風に「夢」や「やりたいこと」を諦めてしまった人々に「今からでも遅くはない。まだまだやれるはずだ。」と勇気を与えてくれるのが、本書である。

著者は40代の主婦。リストラを機に「この際だから思い切ったことをやろう」と、6歳の息子を連れてアメリカへ留学しようと思い立ったのだった。本書では、そんな著者と息子・ウキトくんがつまずきながらも楽しく過ごした、留学生活の一部始終が生き生きと綴られている。

特に心を打たれるのは、アメリカ生活を通して成長していくウキトくんの姿である。初めの頃は、言葉の通じる相手が著者しかいない生活に寂しさやもどかしさを感じ、泣いてばかりだった。著者が英会話やテニスを教えようとしても、「だってできないんだもん。」としり込みした。しかしチルドレン・スクールが始まると一変、言葉が通じなくともどんどん周りに溶け込んでいった。そして、学校が始まってひと月もたたないうちに、発音はネイティヴのそれになり、周りの小さい子達を牽引していくほどになるのだから、柔らかな順応力には驚かずにはいられない。その後も、チルドレン・スクール入学前の泣き虫ウキトくんが印象に強いだけに、ページを読み進めるほどに出会うウキトくんの成長ぶりにはなんとも言えない感動を覚えた。

本書ではまた、文化や生活習慣の違いをしっかりと受け止めながらも、周囲の人々と円滑にコミュニケーションを図っていく、著者のバイタリティに感服させられる。そのようなエピソードはふんだんに盛り込まれており、どれも興味深いのだが、とりわけ注目したのは夫から送られてきた荷物を郵便局へ取りに行くシーンである。その郵便局は治安がいいとはいえない地域にあったのだが、アパートの管理人に止められるもウキトくんと二人で郵便局へ向かう気概に目を瞠った。緊張しっぱなしの著者であったが、郵便局の人々と対話しつつ無事に荷物を受け取ることができたのだった。他にも、異なる文化や生活習慣に触れながら状況を打開していくエピソードは笑いや感動に満ちていて、それは本書を楽しむ醍醐味の一つと言えよう。

「効率のいい人生ってなに? 本当に効率のいい人生を送る人なんているのだろうか」と本書の終りに著者は問う。そして、2年間の留学生活を経て、若いだけでは得られない大切な経験をすることができたと語る。著者のその言葉、生き方に、「夢」や「やりたいこと」に期限はないのだと思い至る。今からでも遅くはない。できない理由や失敗する未来を頭に思い描いて、その場でじたばたしているのではなく、まずは一歩踏み出して取り組んでみることが重要なのである。人生を悔いなく生きるために大切なことを教えてくれた著者に感謝しつつ、かつて諦めてしまった「夢」や「やりたいこと」に向かって一歩突き進む意志と勇気を持ちたい。

(written by 葉瑠)


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