文芸社創立20周年を記念し、2016年に産声をあげた《草思社・文芸社W(ダブル)出版賞》。入賞作品のいくつかは、なんと! みんなの本町にて無料で全文公開されます。優れた入賞作品が無料で読めちゃう大盤振舞!《草思社・文芸社W(ダブル)出版賞》に応募しようと考えている方は必読ですよ!
第5回草思社・文芸社W出版賞
堀辰雄のキリスト教 ~二人の多恵子と聖テレジア~

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原稿データ→PDF化作品
二人の多恵子とは、作家・堀辰雄(1904~53)の夫人で、敬虔なクリスチャンであった堀多恵子(1913~2010)と、もう一人は、堀辰雄の熱心な愛読者で、書簡を通じて作家夫妻と親交を結んでいた、こちらも敬虔なクリスチャンであった久津多恵子(1924~51)である。
あるとき堀多恵子は、久津多恵子宛ての書簡として、キリスト教的色彩にあふれた随想「童話風な手紙」を文芸誌に寄稿したのであったが、その刊行直前、久津多恵子は「手紙」を読むことなく、聖テレジア七里ガ浜療養所にて、結核によってこの世を去ってしまう。享年27歳。
それから四年後、久津多恵子の遺稿集『いのち守る日日』が刊行され、その巻頭には堀辰雄による追悼文が掲載されたのであったが、このときすでに堀辰雄自身も、結核によって帰らぬ人となっていたのである……
久津多恵子は、堀辰雄の愛読者であるとともに、聖テレジア(1873~97)の教えに順じて生きた敬虔なカトリック信者でもあったのだが、この二人が示していた指針(聖テレジアの「小さき花」と堀辰雄の「小さき絵(Idyll=イディル)」)の同質性を浮きぼりにすることで、両者の存在を心の糧として生きていた久津多恵子の精神的メカニズムを解き明かしてゆく。
さらに、堀辰雄の代表作『風立ちぬ』におけるクリスチャン加藤多恵(後の堀多恵子)の重要な役割を解読するとともに、聖テレジアの教えに傾倒もしくは不可思議な関わりを結んでいた、「四季派」を中心とする野村英夫、立原道造、遠藤周作、井上洋治、木崎さと子、女子パウロ会のシスターらによる、いわば霊的な“聖テレジア・サークル”を可視化してゆく。
第3回草思社・文芸社W出版賞
西の魔女

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原稿データ→PDF化作品
第3回草思社・文芸社W出版賞の文芸社銀賞受賞作。
現実に溶け込めず、空想の世界に逃げ込んでばかりいる皐月は、夜ごと自分が作った「お話」を、心臓の悪い弟に聴かせていた。
そんなある日、クラスメートのヒカル君に誘われて西の町へ「魔女」を探す冒険に出ることに。
しかしそこで待っていたのは……。
10歳の少年少女が繰り広げるピュアな冒険ファンタジー。誰もが心の中に持っていた「何か」を信じられていた日の記憶を呼び起こす一作。
あなたは皐月に「忘れないよ」と言ってあげられますか?
マトモスコープ

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原稿データ→PDF化作品
第3回草思社・文芸社 W出版賞の文芸社銀賞受賞作。
ムシーノサーカスの団員であるオイコラ、ドッコラ、ヨッコラ、チョッコラの4兄弟が、客である子どもたちに不思議な「マトモスコープ」を通してファンタジックなサーカスを見せる物語。
第2回草思社・文芸社W出版賞
砂の星の月

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自然が完全に失われ砂漠化した地球。いくつか点在する都市は超AI社会へと変貌し、そこ住まう地球人は月への移住者らの支配によって辛うじて生かされている。そんな仮死状態ともいえる惑星を舞台に、天才学者カルロ、反政府活動家の妹マリン、遺跡泥棒ルーベンの3人が、未来の「答え」を求めて冒険を重ねる近未来SF小説。高度AI社会が見せるさまざまな技術革新、原子力エンジン搭載の空を飛ぶバイク、月の住民が生み出したおぞましい食糧創出システムと恐怖の生物、生身の人間vsアンドロイド、月への小旅行……。物語を彩るSF的要素も満載のスリリングなエンターテインメントが、読者を一気にラストまで連れてゆく!
沈黙の大地 伝説となったケニア狩猟民

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1973年に単身アフリカに渡り、およそ8年間ケニアで過ごした著者が描く狩猟民族と野生動物の真の姿。彼らは「人間」と「動物」という相対する立場にありながら、押し寄せるヨーロッパ的価値観のグローバル化の波に、ともに押し黙ったまま呑み込まれてゆく。ヨーロッパ人がアフリカにもち込んだ動物保護政策は、希少動物の手厚い保護を建て前に狩猟民族を非難し、彼らの手からもっとも遠い場所にライオン、ゾウ、サイ、カバといった動物たちを囲い込んだ。にもかかわらずヨーロッパやアメリカからはるばるやってきては、“スポーツ”と称して野生動物をかっこうのターゲットにゲーム・ハンティングを行う。本作は、アフリカが辿った近代化の変遷を描くいっぽうで、いまなお形を変え残存する植民地的思想の不条理を描いた真のノンフィクションである。
山羊の檻

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清麗女子高校(清女)2年の美好由佳が惨殺死体で発見された。4か月前にも同校生徒の列車への飛び込み自殺が起きており、清女は臨床心理士・志度朝陽を配備する。赴任とともに由佳と付き合いのあった関係者との面談を進める朝陽。そうして浮かびあがってきたのは、由佳の孤独と痛みにまみれた過去。実母のネグレクト、祖母の疎外、継父の性虐待と拒絶。そしてついに朝陽は、由佳の死に隠された暗部に触れることに――。現代社会に巣食う「人間の闇」の一端を、緞帳の隙間から覗き見るような一作。その様を見た者の心は疼痛に苛まれる。
第1回草思社・文芸社W出版賞
操縦の神業を追って

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航空宇宙工学の泰斗、加藤寛一郎による航空機とその操縦士の卓越した技術進歩に迫る本作は、我が国が誇る旧海軍のレジェンド坂井三郎氏、その坂井氏をして「雲の上の人」と称さるるアメリカのジミー・ドゥリットル氏、さらには人類で初めて音速の壁を破ったチャック・イエーガー氏の物語など、近代軍用航空機世界の発展の歴史を網羅し優れた航空史として楽しむことができる。
ミネラル

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原稿データ→PDF化作品
自殺で妻を亡くした男が、生前の妻の間男と同棲しながら、妻の死の真相を探るミステリータッチのユーモア小説。そうしたキャッチーな枠組みをとりながらも、そこかしこに社会問題への啓発を促すトピックスが織り込まれ、400字詰原稿用紙にして600枚をゆうに超える重厚な一作としてまとめられた本作は、日本の行く末を強力に照らすビームライトのようでもある。