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『2台で3万マイルツーリング』公式レビュー / 第8回

2015/01/21(水)

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 学生時代は気ままにツーリングへと出かけたものだ。長い旅ではない。一泊、もしくは二泊ほどの小旅行である。ソロツーリングだったが、さびしさは覚えなかった。バイクにまたがって風を切って走ることがとにかく楽しかった。乗り回していたバイクは、ヤマハのSR400だ。カフェレーサースタイルを模してハンドルをいじってセパハンにし、バックステップをとりつけ、さらにシングルシートへと換えた。本格仕様だと、僕は一人喜びに浸っていた。前かがみの無理な姿勢が続いてツーリング後はいつも腰痛に襲われていたが、充実した日々であった。あの頃のことを思い返すと、何とも青春をしていたなぁと懐かしくもある。心残りが一つある。もっと遠くの地をバイクで走ればよかったな、ということ。当時、時間だけはたっぷりとあったのだから。ただ、お金はなかった。社会人になると、今度はお金があっても時間がなかった。何というジレンマだろう。

 そこで本書である。会社を辞して旅立つことになる、スケールの大きなツーリングの記録だというのだから興味を誘われないわけがない。作者は新婚時代から度々ご夫君と国内のツーリングを楽しんできた。ある転倒事故がきっかけでしばらくバイクに乗らなくなってしまうが、“海外にバイクを持ちこんで旅をしてみないか?”とのご夫君からの誘いに、作者は軽い返事一つで、ふたたびライダーになる。いつかまたバイクに乗りたいと思っていたからとも語られるが、このレスポンスの早さは並ではなかろう。

 “~に行きたい”“~をしたい”と思っても、行動力が伴わないことがある。結局は頭の中であれやこれやと想像するだけで終わってしまい、後々になって“ああ、あの時に~をすればよかった”なんて言葉を漏らしたりする。それはまさに、今の僕のことでもあるのだから痛いところだ。作者には、そういった後悔に囚われないよう突き進もうとする行動力がある(後に気力や体力、忍耐力をも具えていることがわかってくる)。だからこそ、読んでいて清々しくもあった。

 当初はオーストラリア大陸のツーリングを考えていたようだが、作者が希望するアメリカ大陸縦断の旅へと変更になり、準備期間に入る。海外、それも3万マイルというとてつもない距離のツーリングであるから、入念な準備が必要になった。こうして、三年半もの月日が旅行の準備にあてられた。その中で、スペイン語の学習だけが抜け落ちてしまう。後悔の気持ちと反省の念を抱いたと漏らす作者だが、10ヵ月という長いスパンのはじめての旅の準備であったからそれも致し方なかろう。

 さて、作者たちにはどのような試練が待ち受けているのであろうか?

「二〇〇九年五月に日本を出発し、カナダのバンクーバーからアメリカ、メキシコ、ベリーズ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンの十五ヵ国を走り、二〇一〇年三月に帰国」といった序文に触れるだけでもわくわくしてくる。旅の内容については、ここで書くことは控えよう。ぜひとも読者自身で読み進め、作者がこの旅行で味わったさまざまな感動の追体験をしてもらいたいと思っている。それにしても、作者のたくましさには改めて感服させられる。旅が人生を豊かにしてくれるいかに素晴らしいものであるのか、本書を読了して再確認させられた次第である。

(written by 小木)


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